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ストーリー

BEE HAPPY!  しあわせを運ぶミツバチと共に 長坂養蜂場
BEE HAPPY!  しあわせを運ぶミツバチと共に 長坂養蜂場

三ヶ日みかんの産地として知られる浜松市三ヶ日町は、浜名湖の支湖・猪鼻湖をぐるりと囲むように広がった奥浜名湖の自然を満喫できるエリアです。2001年、三ヶ日町下尾奈の国道301号線沿いに誕生したのが、〈はちみつ専門店 長坂養蜂場〉です。お店には、はちみつ製品や人気のスイーツを求めに、連日たくさんの地元客や観光客で賑わっています。

三ヶ日の自然がくれた最高の贈り物

「長坂養蜂場は、私の祖父である長坂喜平が1935年(昭和10年)に創業しました。若いころ身体が弱かった祖父は、父親が趣味で採蜜していたはちみつを食べることで健康な身体を取り戻したそうです。はちみつに救われた祖父は、周囲の人たちにもはちみつの滋養を届けたいという想いから養蜂家になると決意したそうです」

お話を伺ったのは、長坂養蜂場の三代目・長坂善人さん。三ヶ日町で養蜂業を継承しながら、はちみつの6次産業化に取り組み、さまざまなはちみつ商品を販売しています。

「ミツバチは巣箱の半径2㎞圏内で花から花へと飛び回りながら花蜜を集めて巣に持ち帰り、ミツバチの酵素でブドウ糖と果糖に分解します。そして自分たちの羽で3日間かけて水分を飛ばして甘みが濃縮されたはちみつを完成させます」

一匹のミツバチが一生をかけてつくることができるはちみつの量はたったスプーン一杯。その中にビタミンやミネラル、ポリフェノールなど様々な栄養成分がバランス良く含まれた、まさにパーフェクトフードです。長坂養蜂場では、現在三ヶ日地域に7か所の養蜂場でその貴重はちみつを採蜜しています」

長坂養蜂場の創業当時から続く歴史ある品が、2015年に第一回ハニー・オブ・ザ・イヤー 優秀賞を獲得した〈国産三ヶ日みかん蜂蜜〉です。毎年5月のわずかな期間に咲くミカンの花の蜜から採った混じり気のないはちみつは、爽やかな香りを楽しめるフルーティーでさっぱりとした上品さが特長です。

「三ヶ日町は温暖な気候や南斜面の丘陵地、石灰質の土壌に恵まれ、全国的なミカン産地として知られていますが、この温暖な気候が寒さに弱いミツバチにも最適な環境なんです。でも私たちが三ヶ日町で長年養蜂業を続けてきた理由はそれだけではありません」

「三ヶ日町は全国的にも珍しいミカン産地なんです。一般的な産地では、〈温州みかん〉だけでなく〈デコポン〉や〈はるみ〉といったさまざまな品種のミカンを育てて生計を立てています。ところが三ヶ日では土地に適した〈青島温州〉という品種が全体の6割~7割を占めていて、それを3月まで貯蔵しながら販売しています。柑橘類はどれも同じような時期に花が咲くので、もし三ヶ日がいろんな品種のミカンを生産する地域なら、色々な品種の花蜜が混ざってしまい、純度の高いみかん蜂蜜を採取することができません。長坂養蜂場の〈国産三ヶ日みかん蜂蜜〉が他の地域と比べて〈青島温州〉の純度が高く、透明度や香りが高いと評価していただけるのは、ここ三ヶ日の農家さんたちのおかげなんです」

2代目の蜂蜜ができるまで

〈国産三ヶ日みかん蜂蜜〉に限らず、養蜂業には豊かな自然環境とともに、その地で暮らす人々の営みが深く関わっています。
今ではとても貴重なレンゲ蜂蜜も、初代・長坂喜平さんの時代は日本中のレンゲ畑で採蜜されていました。長坂養蜂場では、4月に磐田、6月に東北の鳴子温泉、7月、8月、9月、10月は北海道と、レンゲの開花に合わせて移動しながら採蜜する移動養蜂を行っていたそうです。

「ミツバチは巣箱周辺を自由に飛び回るので、採蜜をしているとミカンに他の花の蜜が混じったはちみつが採れることがあります。なかでもミカンとレンゲの花蜜が混ざったはちみつが特にお気に入りだった祖父は、ミカンとレンゲのはちみつを独自の配合でブレンドし、〈長坂の蜂蜜〉として蜂蜜問屋に卸していました」

しかし高度成長期を迎えた日本では、1960年代以降になるとレンゲ畑が急激に減少していきました。善人さんの父・二代目の長坂光男さんは、採れなくなったレンゲの蜂蜜に代わるものとして、広大な自然が残る中国のアカシヤの原生林で、日本式の養蜂・品質管理で採蜜する新たなチャレンジを開始。〈国産三ヶ日みかん蜂蜜〉とブレンドした〈二代目の蜂蜜〉を開発しました。蜂蜜の女王と謳われるアカシア蜂蜜の上品な甘さと三ヶ日みかんの爽やかでフルーティーな香りが楽しめる〈二代目の蜂蜜〉は、長坂養蜂場が誇る人気NO.1オリジナルブレンドはちみつになりました。

「養蜂業は、巣箱周辺の自然環境が全てと言っても過言ではありません。初代が行っていた移動養蜂が続けられなくなったのも、全国的にレンゲ畑が失われ、移動にかかるコストを賄えるだけのはちみつが採れなくなってしまったからなんです。そうしてどんどんはちみつが高級品になってしまいました。私の父は、はちみつを高級な嗜好品ではなく、砂糖に代わる健康的な甘味料として、毎日の食卓にあるもの、毎日続けられるものにしたいという想いがありました」

毎日の食卓にはちみつを

はちみつをもっと身近にしたい。二代目はオリジナルはちみつの開発の他に、はちみつの商品開発やはちみつ販売業を開始。三代目は幼少の頃より文字通り“はちみつ漬け”の生活を送っていました。

「わが家では、料理の基本〈さしすせそ〉ならぬ、はちみつを取り入れた〈“は”しすせそ〉。素材の味を引き立てる万能調味料として、毎日の食卓で大活躍していました。カレーに入れればコクが出ますし、酢の物に入れれば酸味がまろやかに、 肉や魚は臭みとって柔らかくしくれます。ジュースは近所の農家さんからわけていただいた摘果みかんを母が搾ったはちみつ入りの青みかんジュースがわが家の定番でした。ホットケーキにもはちみつ、いちごにもはちみつだったので、子どもの頃は市販のジュースやいちごの練乳に憧れたほどです」

故郷の自然、栄養たっぷりのはちみつ、愛情が込められた家庭の味。大人になって改めてその素晴らしさに気づいたという善人さんは、三代目に就任するとさっそく子どもの頃に飲んでいたジュースの商品開発に取りかかり「三ヶ日みかん青しぼり」として販売しました。その後も専務で弟の長坂恭輔さんとタッグを組み、〈はちみつぶんぶんラスク〉や〈はちみつペカンナッツショコラ〉、〈はちみつソフトクリーム〉などの人気商品を次々と世に送り出しています。

「はちみつをたっぷり使うことでカリカリとした食感を実現した〈はちみつぶんぶんラスク〉、はちみつ入りのソフトクリームの上からさらに“追いはちみつ”をかけるはちみつソフトクリームなど、養蜂屋ならではの贅沢なはちみつの使い方が、うちのスイーツの魅力です」

「僕たちは暮らしの中心にはちみつがありましたから、はちみつの美味しさだけでなく、はちみつの免疫活性効果や整腸作用、美肌効果など、はちみつが持つさまざまな力を生活の中で体感してきました。今こうして僕たちが新商品の開発を続けているのには、やはり祖父や父のように、多くの方にはちみつのおいしさやはちみつがある豊かな暮らしを知ってもらいたいと思いが大きいですね」

ミツバチのように生きる

「養蜂は区分で言うと畜産業にあたりますが、他の畜産業に比べて人間がコントロールできる部分が少なく、感覚的には漁業に近いところがあります。近年は大雨や猛暑の影響で採蜜量が減少することもあります。だからこそ三ヶ日の豊かな自然には、感謝の気持ちしかありません」

ミツバチは、花蜜を求めて花から花へと飛び回ることで花粉を運び、植物の受粉を助ける役割を担っています。一方で、ミツバチは環境汚染がある場所では生きていけないので、養蜂にはミツバチが安心して活動できる広大な自然環境が必要です。
世界的な気候変動や土地開発などによって、ミツバチを取り巻く環境が厳しくなっている今、長坂養蜂場でははちみつの素晴らしさを伝える活動とともに、さまざまな環境保全活動を続けています。

「ミツバチは、自分や家族の糧を得るために働くことで、結果的に豊かな緑を守り、作物を実らせるといった、生態系の循環に重要な役割を果たし、人々をしあわせにしているんです。僕はいつも、ミツバチのような生き方ができればなと思うんです。長坂養蜂場の活動も、ミツバチがもたらす素晴らしい恵みを通じて、まわりの人をしあわせにするものでありたい、そう願っています」

「BEE HAPPY !」
長坂養蜂場が掲げるこの言葉には、初代から脈々と受け継がれているミツバチへの感謝の気持ちと、“ミツバチのように周囲にしあわせを届けたいという想いが込められてました。

株式会社長坂養蜂場

住所:
静岡県浜松市北区三ヶ日町下尾奈97-1
電話:
053-524-1183
URL:
https://www.1183.co.jp