浜松パワーフード

100年以上続く歴史あるみかん農園

冬のくだものといえばみかん。浜松・浜名湖地域は全国的にもみかんの産地として有名ですが、みかん栽培が本格的に広がったのは、明治時代に入ってからと言われています。温暖な気候と国内有数の日照量、晩秋から吹き降ろす「遠州の空っ風」。栽培に適した風土に恵まれた浜松・浜名湖地域は、国内有数のみかん産地へと発展を遂げました。

新東名スマートICから車で5分。三方原台地の北端に位置する浜松市北区都田に、伊藤農園のみかん畑と直売所があります。小高い山の南東に面した穏やかな斜面には、青空の下で太陽の光を燦々と浴びるみかんの木が並んでいます。

テクノロード沿いに直売所の大きな看板があります

伊藤農園は、明治時代から続くみかん農家として100年以上の歴史を誇ります。現在は5代目となる伊藤徹志さんが農園を営み、徹志さんのお祖父様にあたる3代目からこの地で栽培を続けています。

伊藤農園では、早生みかんのプライベートブランド「シアワセみかん」を中心に、ネーブル、しらぬい（デコポン）、次郎柿を栽培。県内外から永く愛されて続けてきたみかん農園です。

次郎柿

ネーブル

祖父の情熱で育んだみかん畑

「もとは隣町の宮口というところで栽培していましたが、祖父が昭和20年頃に都田に移り、松林だった場所を当時としては珍しくブルドーザーを使って開墾したそうです。三方原台地は、赤土と言われていますが、うちの畑はどういうわけか河原にあるような丸や角ばった石が適度に混ざっていて、さらっとしています。みかん山の標高は120mほどで、三方原台地の中では根本山に次いで2番目に高い山。水はけが良く、風も通るし、日当たりもいい。みかん栽培に適した土地だと思います」

「祖父は、大手肥料メーカーと混合肥料の配合を研究するなど、とにかく研究熱心な人。私がまだ子どもの頃は、三ヶ日の農家の方が祖父にみかんの栽培を教わりに来ていた記憶がありますね」

お祖父様のみかんへのこだわりはそれだけではありません。
三ケ日では青島みかんが主流ですが、ここ伊藤農園では11月中旬から12月上旬にかけて収穫される早生みかんを栽培しています。早生にも30種類ほどの品種があり、その品種選びにおいてもお祖父様の並々ならぬ情熱がありました。

シアワセみかん

「祖父はその昔、この地に適した美味しいみかんを求め、全国のみかんを食べ歩いたそうです。そして福岡県で『宮川早生（持丸系）』と呼ばれる品種に出会い、浜松へ持ち帰って栽培をはじめました。宮川早生は、『じょうのう膜』と呼ばれるみかんの内皮が薄くて食べやすいのが特徴です。また糖度と酸味のバランスが良く、風味豊かなあじわいが人気の品種です。祖父の狙い通りに美味しく育ったみかんの味は、やがて口コミで広がり、祖父の代からのお客様を中心に直接販売してきました。なかには2代3代とご愛顧いただき、ありがたいことに『伊藤農園のみかんしか食べられない』とお声がけをいただくこともあります」

親子3代の味を未来に残すために

「実は、私も父も元サラリーマン。祖父が102歳まで長生きしましたので、父は定年まで勤め上げてから農園を継ぎました。私も20年ほどIT業界で働いてから農園を継ぎ、父と一緒にみかんを育てて10年になります」

歴史ある農家、おいしいみかんを育ててきた農園だからこそ、守らなければならないという責任感も大きいもの。
伊藤農園では、樹木全体に日が当るよう剪定処理を行い、一本の木に対して適正なみかんの個数となるよう摘果（間引き）処理をするなど丁寧な手入れを重ねることで、お祖父様から受け継いだ畑を責任持って育てています。
また、徹志さんによって親子3代の味をブランド化し、全国に向けて浜松の美味しいみかんの味を届けています。

「うちは口コミだけでやってきましたので、私が継ぐまでホームページもパンフレットもありませんでした。そこでサイト構築と同時にプライベートブランドも立ち上げ、『美味しいみかんを食べて皆さまに幸せな時間を味わってほしい！！』という思いを込めて〈シアワセみかん〉と名付けました。ブランド化によって、さらに幅広い世代や地域の方々にもうちのみかんの美味しさを知っていただけたらと思っています」

山の上に建つ「都田丸山緑地展望台」からは、伊藤農園のみかん畑だけでなく、浜松の景色が一望できます。

「天気の良い日はここから富士山も見えるんですよ」

山の上から望む都田の町は、道路が整備され、周辺のみかん畑も工場用地に変わり、住宅街やショッピングセンターが次々に建設されて様変わりしました。時代と共に移りゆく景色の中で、ここはいつまでも青々とみかんの葉が茂っていてほしいと思います。