浜松パワーフード 浜松パワーフード

ストーリー

身体に良いもの、安全なものをつくりたい。
身体に良いもの、安全なものをつくりたい。

浜松市北区三方原町。浜名湖と天竜川の間に広がる洪積台地に、山本茂さん、清美さんご夫妻が営む舞茸農園があります。
敷地内に並ぶ6棟の栽培ハウスでは、舞茸とヒラタケを栽培しています。一日に多い時では2,000株の舞茸が地元の飲食店やスーパー、ファーマーズマーケットに出荷され、敷地内の直売所で採れたてのきのこを買うこともできます。

山本さんの舞茸は、香り高く、歯ざわりの良い、まさに「きのこの王様」。地元の人はもちろん、プロの料理人からも高く評価されています。

身体に良いものをつくりたい 漬物屋から舞茸栽培へ

 

「三方原といえば馬鈴薯が有名でしょう。この辺りは馬鈴薯の二期作として大根の栽培も盛んで、うちはもともと大根のお漬物を作っていたんですよ」

お話を伺ったのは、奥さんの清美さん。直売所には、清美さんの明るいお人柄を慕って地元のお客様が訪ねてきます。
山本さんご夫婦が舞茸栽培を始めたのは今から24年前。きっかけは、食品を含むあらゆる製品の製造責任について定めたPL法の制定でした。添加物や賞味期限、アレルギー表示等、食品の安全性に関わる規制は、ご夫婦が食の安全や食の栄養について考える契機となりました。

「大根の沢庵漬けには黄色の着色料を使うでしょう。当時はそれが当たり前だと思って使っていましたが、私はちょっと抵抗があったんです。添加物の表示が義務付けられたことで、胸を張って出荷できる安心・安全なものを作りたいという気持ちが強くなりました」

舞茸に多く含まれる免疫パワー“β-グルガン”

 

新しい農作物を育てることを決心したものの、何を育てるか悩んでいたご夫婦は、ある時舞茸の薬効成分について書かれた一冊の本に出合いました。
豊富なビタミンやカリウム、鉄分、植物繊維。中でも免疫力を高める「β-グルカン」という成分は、風邪やインフルエンザだけでなく、ガンの予防にも効果があるといいます。

「これからは体に良いもの、安心・安全なものが大切な時代なんだとつくづく思いました」

安心・安全な無農薬菌床栽培の確立

 

ところが、当時はまだ舞茸のビン栽培はまだ確立されていませんでした。
「誰でもすぐ栽培できるものじゃないからこそ、やる価値がある」
強い信念で始めてみたものの、舞茸の栽培は容易なものではありませんでした。

「舞茸を諦めた農家さんが沢山いらっしゃるということは、栽培をはじめてしばらく経ってから知りました。何も知らなかったから始めらたんだと思いますね」

舞茸は、農薬を使用せず栽培室で育てることができる作物ですが、雑菌予防や害虫対策として培地に薬剤を使うところもあります。

山本さんご夫婦は、無農薬でも高品質で安定した生産を続けるために、EM(有用微生物群)の力を借りた菌床の研究と栽培室の管理技術の研究をはじめます。

「一番大変なのは栽培室の管理です。おが粉の水分量や栽培室の温度帯を舞茸に合わせる『部屋を作る技術』が難しいのです。どうにか技術を確立するのに10年はかかりました」

料理長の忘れられないひと言

 

現在では、舞茸のビン栽培が確立され、大手メーカーによる大量生産でどこでもすぐに手に入るようになりました。大量生産による価格の暴落は農家にとって大きな痛手です。

「市場への出荷を止め、この先の生産を悩んでいた時、舘山寺温泉のバスツアーとして舞茸狩りのお話をいただきました。ホテル九重の料理長さんがわざわざおみえになって『自信を持って売りなさい、良いもの作っているんだから、なにも安く売る必要もない』と励ましてくださったんです。その言葉にどれだけ救われたか」

「自分たちの舞茸の味をわかってくれる人に食べてもらいたい」

今では山本さんの舞茸に惚れ込んだ市内外の飲食店や、素材の良さをわかってくれるスーパーに支えられて、安心して食べられる浜松産の舞茸の味を守っています。

「今一番嬉しいのは、娘夫婦が後を継いでくれたこと。若い2人の技術はまだまだこれからだけど、分からないことがあれば教えてくれる人がすぐ側にいるって幸せですよね」

困難な舞茸栽培にチャレンジしてきたご夫婦の物語は、これからも次の世代へと続いていきそうです。

山本舞茸栽培センター

住所:
静岡県浜松市北区三方原町934-2
電話:
053-437-9595
URL: